ある雨の降るお盆。二人は車に乗り南に進んでいく。いくつかの休憩をはさみながら目的の地にたどり着く。岩手山の馬返し駐車場。ここから登山を始めようとする。
岩手山の標高は2038mで傾斜がきつい山。岩手県のシンボルであり、日本百名山の一つ。
ここではボランティアとして山小屋に薪を運ぶことができる。二人は薪置き場からいくつかとりバックパックにセットする。登山口にある登山箱の用紙に名前を書き登り始める。天候は相変わらず雨で山裾は霧に包まれていた。
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登山口1 |
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登山口2 |
最初は森の中を抜けていく、前日に飲みすぎた反動で二日酔いを感じながらとぼとぼとのぼっていく。登山口から1.5kmの1合目に到着。この時点で息切れが激しい。確実に体が不調なのが分かる。激しい発汗が止まらない。二人は少しずつ会話をしながら進んでいく。登りは旧道を使う。傾斜は急で非常に険しい。
2合目以降も体の不調が続く。5合目まで少しづつ休憩しながら山頂を目指していく。霧が深く、風景もはっきりと分からず、進むことが非常に不安で楽しさが削がれる。自分が登っていた道やだんだん離れていく麓、遠くにある町並み、近づいてくる山頂を見ながら進んでいくことが醍醐味の一つであるが、それを霧が包んでしまっている。雨を浴びながら むき出しの急斜面の岩肌を登っていった。雨で滑りやすくなっていたり、細かい石や不安定な岩が行く手をはばむ。休憩の回数も増えていた。会話がどんどん減っている。
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7合目まで |
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山頂まで |
7合目あたりに入ってくると発汗も止み、体の調子が戻ってくる。道が岩肌だったのが草木が生い茂る道になった。狭いが歩きやすい道になっていく。会話も少し弾んできた。草木を抜けると8合目の山小屋が見えてきた。ここで昼食をとる。山小屋に麓でとっておいた薪を渡し、カップ麺をかう。雨が降って気温が下がっていた体によくじみるあたたかさだった。
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山小屋 |
しばらく休んでからまた登山再開。雲行きが怪しくなってきている。草木を抜けるとまた岩肌が見えてくる。9合目につくと近くで雷鳴が聞こえた。すると、激しい雨が降ってきた。大きな積乱雲が目の前にある。そこから雷鳴が再びなり始めた。二人は急いで山頂を目指した。山頂を降りて来る人が「もうすぐですよ」と声をかけてきた。激しい雷雨の中にもかかわらず軽装でおどろかされた。「有難うございます」と返事をし歩みだす。
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山頂 |
山頂までは雷に気を付けながら進んでいき、簡単に到着。しかし危険なことには変わらず、急いで記念撮影とお参りを済ませ、急いで降りる。山頂にたどり着いた感動もじっくり味わう時間がなかった。雷はまだ続いていて、目の前で光った時は迫力ある瞬間であった。
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下山 |
急いで山を降りていく、登りの時とは違い、新道を通っていく。旧道と比べてこちらは道が狭いが、比較的通りやすく整備されている。降りていると7合目あたりでだんだん雲がなくなり、晴れ間が見えてきた、しかし山頂は未だに雲で包まれている。いくつかの雨を浴びながら麓を目指していると、本格的に晴れてきた。上るときには霧で包まれて見えなかった遠くの町が見下ろせた。太陽の光差す町は一層輝いて見えた。雨で地面が不安定になっていたが、旧道に比べて安全に降りることができた。3合目過ぎたあたりから兄が走り始めたので、それについていった。高低差1000m程の往復もあっけなく終わった。
登るときに異常な発汗があったが、しばらくして止まり体が非常に軽くなった。体を動かすことによって汗とともに毒が抜けたと感じられた。登山は目標がはっきりしていて、簡単に達成感が得られる楽しい運動である。八戸から2時間も走らせれば岩手山にたどり着くことができる。皆さんもぜひ山に挑んでみてほしい。